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「峰風」とともに

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202.スペック至上主義に思う。(ワシントン条約)

スペック競争と言うと私は軍艦愛好家でもありますので
建艦オリンピックと呼ばれたワシントン条約,ロンドン条約を思い出します。

ワシントン条約は重巡洋艦を生み、 ロンドン条約は軽巡洋艦の近代化を促しました。
まず史上初の世界的な規模の軍縮条約「ワシントン条約」から考察してみましょう。

第一次大戦が終わり、世界中が疲弊している中、海軍力の増強だけは続けられ様としていました。 というのも同大戦末期に行なわれたジェットランド会戦の結果、それまで各国が血税を絞ってつくり続けて来た主力艦(戦艦・巡洋戦艦)には重大な欠陥がある事が判ったからです。

しかし、そのギャップを埋める新型艦を作って艦隊をそろえる力は
アメリカ位にしか残っていませんでした。

そこでイギリスが音頭をとって戦勝国を中心に軍縮会議を開くことになりました。(1922年)
アメリカとて使わないで良い金は使いたくないので軍縮のテーブルに快く着いてくれました。

その結果、戦艦・巡洋戦艦の新造は行なわない。空母の保有数には枠をはめる・・・。
大雑把にいえばこんな内容の軍縮が成立したかに見えました。
しかし、どこにでも決まりごとの裏を欠くのが好きな人がいるもので今回もそうした人達は

「巡洋艦は8インチ主砲の搭載と一隻あたり1万トンの基準排水量が認められている。しかも数に枠は嵌められていない。だったら、戦艦の補助として8インチ砲巡洋艦を量産しよう。」と考えたのです。これが条約型巡洋艦 (通称、重巡洋艦)の誕生でした。

つまり、重巡は海軍の華の様に言われますが実際は戦闘上必要があって生まれた艦種ではなく政治上の枠から生み出された無理の塊の様な軍艦でした。

上から「妙高」 (日本) 「ペンサコラ」 (米) 「ロンドン」 (英)  ワシントン条約第一次建艦群
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どれも1万トン前後の排水量、8インチの主砲をどう積むか、防御はどうするか、魚雷を積むか積まないか、偵察機の搭載方法と数はどうするか、速力と航続距離のバランスは?と色々の案を盛り込んで真に「建艦オリンピック」の様相を呈しました。

ワシントン条約第二次建艦群
第一次建艦の成果を盛り込んで第二次の建艦が行なわれました。
上から「愛宕」 (日本) 「ヒューストン」 (米) 「エクゼダー」 (英)です。
202.スペック至上主義に思う。(ワシントン条約)_b0076232_10245415.jpg

他国もそれぞれ特徴ある重巡を発表しましたがここでは長くなるので日英米の3カ国に絞って話を進めてゆきます。

日本は戦艦数を対米6割にされてしまったので重巡には強い戦闘力と速度を求めました。
雷撃巡洋艦それが日本の重巡の正体でした。

米国はそんな日本の水雷戦隊や潜水艦の捜索に力を注ぎ、偵察機の搭載数に拘り、4~6機の搭載は当たり前でした。
日本侵攻時の本来の艦隊巡洋艦の役目、偵察が主任務でした。

英国は広い植民地を世界中に持っていました。そこから吸い上げる富が英国の繁栄を支えていたのです。だから英国の重巡に求められたのは極力長い時間海上に留まっていられる事でした。 長い航続距離と兵装を減らしてまで乗員の居住性を高めたのです。

そしてどんな天候にも負けない丈夫な船体。  
英国の重巡がまるで客船の様に高い乾舷をもっているのはそのためです。

折角、軍縮が実現したのに新たな競争も始まってしまい、更なる軍縮を求めて
今度は1930年にロンドンで新たな会議が持たれました。
それが次回「ロンドン条約」です。
by SS992 | 2007-05-08 10:57 | モロモロ