「峰風」とともに

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カテゴリ:メカ談義( 168 )

735. 竜の卵 (1) ロータリー・エンジンの誕生

 マツダ(旧東洋工業)の看板として有名なロータリー・エンジンは着想は古く、
1588年にイタリアのラメリーによるロータリーピストン式揚水ポンプが記録に残っています。

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その後、蒸気機関の一種として研究され、蒸気機関の父ジェームス・ワットも開発を試みましたが
失敗、彼が発明したレシプロ式蒸気機関には気密性、耐久性の点で遠く及びませんでした。

その後1938年にフランスのサンソー・ド・ラブーによってロータリー機関の理論飛躍的に
進歩
しましたが、やはり気密性や冷却性に問題があり実用化には到りませんでした。
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1924年、ドイツのフェリックス・ヴァンケル技師(当時20歳)はレシプロ・エンジン往復運動を
回転運動に変換
しているのは非効率であり、エンジンは回転運動のみで完結させるべきだと考えました。
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彼はピストンやバルブの往復運動は高速運転の妨げであり、コンロッドやクランクといった変換機構は
余分なスペース
を生じさせていると考えたのです。
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ヴァンケル・ロータリーが如何にシンプル・コンパクトであるか判ります。

また作動工程も4stより2stに近く、エンジン1回転につき1回の爆発を実現しています。
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かつエンジン作動の各工程を厳密に区分する事が可能なので2stの問題点である混合気の吹き抜けの
問題も吸排気口の位置の工夫によって避けることが出来ました。
         (上の理論図のままでは吹き抜けが起こります。)

しかも出力実排気量の2倍相当の高出力が得られました。

この様にロータリー・エンジンは4stと2stの良いとこ取りをしたエンジンの様に見えました。

しかし、実際は潤滑の問題でガソリンに潤滑油を混ぜる2st方式を取らざるを得ず、排気ガスが汚い
四輪にも共通する事ですが、燃費が悪い排気ガスがマフラーを赤熱させるほど高温であると
いった実用車とするには色々と解決しなければならない問題を抱えていたのでした。

                                                     (この項続く
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by SS992 | 2012-01-06 21:00 | メカ談義

713.DUCATI 1199 パニガーレ の予想 (飛び込み記事)

 DUCATI次期スーパー・バイク1199の名前がパニガーレだと言う事が判りましたが、
その実態ももう少し判ってきたのでここで纏めてみたいと思います。

前回記事No.700で扱った時点ではスクープ画像からの推測が主でしたが、今回はNet上からの取材が
主なものです。

まず、エンジンの配置ですが、少し起きたLツインの様です。

カム駆動はコグド・ベルトからカム・ギアトレインに変った様です。

DUCATI 車体構成に関する特許申請時の図表
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エンジン直接付いたエアー・クリーナー・ボックス兼用のステアリング・ホルダー
エンジン後端に直接付いたスイング・アーム が 特徴です。

これを基本としてエアークリーナー・ボックスがカーボン・ファイバー製のもの、
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エアー・クリーナー・ボックスがアルミ?のもの
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この二つが予想されていましたが、カーボン・ファイバー製のものはMotoGpマシンと同じ構成になるので
市販は無理
と考えられます。

DUCATI 1199 パニガーレイメージ・リーダーMoto・GPデスモセディッチです。
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特に塗装を合わせるとソックリです。
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1199ストリート・バイクですからライトがついています。

しかし、MotoGPマシンには当然ついていません

でも、比べてもほとんど違和感がないのは驚きです。

ただ、次期MotoGPマシンの方がアルミ・フレームを装備しそうなのでこのノン・フレーム構造に終わる
可能性
もあります。

もっともスクープ画像によればノン・フレーム版有望なのですが・・・。
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車体も随分とコンパクトな物の様です。

昔ながらのトリレス・フレーム予想画像もでていますが、
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これだとあまり進歩が感じられません

12月には真偽がはっきりするでしょう。

楽しみです。

やっぱりこれが一番カッコイイです!
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次回から空冷Lツインの考察に戻ります。

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by SS992 | 2011-10-14 21:00 | メカ談義

700.DUCATI 1199 2012式

 このBlogも今回、記念すべき700回を迎えました。

私はこの700回記念をDUCATIの新型スーパーバイクに捧げたいと思います。

今年の夏?ムジェロで撮影された2012年式1199のスクープ・ショットです。
(車名はスーパー・クァドラータ、ないしは、1199 Exeme の様です。)

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この写真から得られる一番の情報はサスペンション・ユニットの取り付け方が水平だという事です。

排気管は1198までのリア・カウル内臓型からアンダー・カウル内臓式に変った様です。
質量の集中化が目的です。)

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フレームアルミ製になったとの情報を得ていますが、日本車の様なツイン・スパー・フレームでは
無いようです。
(ライダーの膝頭付近の車体が非常にタイトなのがそれを示しています。)

ステアリング・ユニットMotoGPレーサーばりに巨大なエアークリーナー・ボックス
取り付けられるとの情報を得ていますが、さすがにカーボン繊維製ではないでしょう。

 また、車体全体に目をやるとライダーの体に比べ車体が非常にコンパクトなのが判ります。

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当然、運動性向上の鍵となるショート・ホイールベース化も実現している様です。

そして、アンチ・スクワット性の向上に貢献する超々ロング・スイングアームも装備できた様です。

これでコーナリング時、早い段階でアクセルを大きくあけて強大なトラクションを掛けても
スリップ・ダウンする恐れは減りました

エンジン関係は外からは判別できないのでNetに流れている情報を信じるしかありませんが、

排気量は1199ccの90°Vツイン、もちろん超ショート・ストローク高回転・高出力を狙っています。

また、バルブ作動は伝統のデスモ・ドローミックですがそれを駆動する方式はコグド・ベルトからカム・ギア・トレインに変った様です。

ここで注目したいのはエンジンの形式が90°Vツインに変った事です。

シリンダーの挟み角が90°ならVでもLでも同じじゃないかと思われるかもしれませんが、
エンジンの冷却方式が水冷である以上、レイアウトはVツインであるべきです。
Lツイン空冷だった時に最高の冷却効率を発揮するレイアウトでした。)

90°Vとする事で90°L時に比べエンジン長を短く出来、ひいてはショート・ホイール・ベース
超々ロング・スイングアーム両立させる事が出来たのです。

アプリリアは更に狭角のVツイン(65°)を装備していますが、DUCATIはまずLツインをVツインにする事で
出来る限りの事をやり、そこで限界が見えたら次こそ狭角Vツインを追求するつもりなのだと私は思います。

DUCATIの技術陣は技術の王道を歩いています。

1199の顔はモトGPレプリカ、デスモ・セディッチにそっくりです。
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DUCATI技術陣の自信と誇りがそこには溢れている様です。

今までNetに流れている情報を総合したと思しき画像が手に入りました。
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車体色が赤のものより細部がはっきり判るので黄色のものを載せておきます。

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by SS992 | 2011-08-21 21:00 | メカ談義

695.ツイン・エンジンの可能性 (14) 超ショート・ストローク 位相クランク

 パリダカ・マシン NXR劣悪な環境と使用燃料の質の悪さを考慮して、必要以上に
高回転を求めませんでした。

しかし、もし、充分な整備と高オクタン価の良質な燃料を使用出来る環境であったならどうでしょう。

1000ccクラスで超ショート・ストローク狭角Vツインが可能になるのではないでしょうか?

ブロスのエンジンが頭打ちが早く来てしまうのはエンジンのストロークが長めであり、高回転で廻すとピストンがシリンダーの壁を擦る速度が速く為り過ぎてしまうのが原因と考えられます。

排気量を増やせばVバンクの迎角をより少なく出来ますが、敢えて52°程度に収めればボアを増やせる様になると考えられます。

 HONDA VTR 1000 F ( 1997年式 90°Vツイン ピポットレス・スイングアーム装備 )
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排気量 996cc ボアXストローク 98 X 66 mm

 HONDA ブロス プロダクト 1 ( 1988年式 52°狭角Vツイン 位相クランク )
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排気量 647cc ボアXストローク 79 X 66 mm

 HONDA NRX ( 1986年式 45°V狭角ツイン 位相クランク )
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排気量 779cc ボアXストローク 83 X 72 mm

VTR1000Fブロスストロークは奇しくも同じですが、ボア(シリンダー直径)は1.2倍、VTR1000Fの方が大きく、相対的にショート・ストロークになっています。

反対にNXRブロスの比較ではボアがあまり変らないのに、ストロークは1,1倍NXRの方が長くなって
おり、ロング・ストロークであると言えます。

NXRはパリ・ダカの過酷な環境を考慮して耕運機の如きエンジンを目指しました。

極普通の環境と良質な燃料、これが確保される前提はありますが、

大径ボアX超ショート・ストロークの狭角Vツイン・・・HONDAさん、是非造ってください。

 <追記> 位相クランクの狭角V4も理論的には考えられますが、直4に対してメリットがありません。

クランクウエブの数が直4と変らないのでエンジン幅はあまり直4と変らず、
エンジン長も決して短く設定出来る訳では無いからです。
                                                        ( この項、了

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by SS992 | 2011-08-01 21:00 | メカ談義

693.ツイン・エンジンの可能性 (12) 位相クランクの登場

 位相クランクとはVツインエンジン90°のシリンダー・バンク角で無くても一次振動を消去出来る
技術
としてHONDAが開発したものです。

具体的には52°の狭角Vツイン・エンジンクランク部分に工夫を凝らしてバランサー無しでも一次振動を消去出来る様にしたのです。

 位相クランクと同軸クランクの比較
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シリンダー同士の迎え角は52°なのにコンロッド同士の迎え角は90°に近い事が判ります。

 位相クランクの構造
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この結果、2つのシリンダーの迎え角52°まで狭める事に成功しました。

この数値は現在、最高峰のV4エンジンの一つ、、アプリリアのRSV465°よりも狭い数値です。

 RSV4 の 狭角V4エンジン
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 HONDA ブロス プロダクト2 (1988年式 398cc 37ps/8500rpm )
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 HONDA ブロス プロダクト1 (1988年式 647cc 55ps/7500rpm )
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特にブロス プロダクト1ジム・カーナ用レーサーとして使用され、人気を博しましたが、使用した友人の
話では高回転を使おうとしても直ぐに頭打ちになってしまい、あまり速く走れないとボヤいていた所を見ると
このエンジン形式は高回転・高出力型には向かないのかもしれません。

しかし、このエンジンの開発過程を考えるとこれは腑に落ちません

次回は何故、この位相クランク・エンジン開発されたか、その辺りを考察してみたいと思います。

                                                        ( この項続く

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by SS992 | 2011-07-24 21:00 | メカ談義

690.ツイン・エンジンの可能性 (9) DUCATIの再評価

 DUCATILツイン・エンジン90°V2エンジン の一種です。

それが何故、Lツインと呼ばれる様になったか、と言えば、それはエンジンの搭載方法にありました。

 DUCATI スパッジアリ・レプリカ (2011年 TIO製作)
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上図を見れば判るとおり、90°Vツイン・エンジン前バンクは水平に、後バンクは垂直に立っています。

これは1970年代当時の冷却方法が空冷であったため、前後のシリンダーを最大限に冷却する方法として
このレイアウトが選ばれたのです。(その結果、Lの字に見えるのでLツインと呼ばれました。)

 これはベベルの時代からコグド・ベルトを使ったパンタ系のエンジンになっても変りませんでした。

SS1000DSエンジン ( 2003年式 パンタのエンジンの画像が無いので代用します。)
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一番の特徴はカム駆動力の伝達がベベル・ギアからコグド・ベルトに変った事ですが、もう一つ大きく変ったのがスイング・アームの取り付け位置です。

これまでスイング・アーム・ピボットメイン・フレーム後端にありましたが、それをやめ、エンジン自体の
後端に付けると言う工夫
を成し、ホイール・ベースを長くする事なく、スイング・アーム長の増大に成功
しました。

 DUCATI スポーツ1000 ( レーサー仕様 )
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さて、DUCATIの花形と言えばスーパー・バイク・レーサーでしょう。

 DUCATI  11198  (2010年式)
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カウルを剥いでみるとエンジンの積み方スイング・アーム・ピボットの様子が判ります。
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これは初期のマシンから変らず、水冷のLツイン・エンジンでした。

 DUCATI 888 (1990年代)
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 888のLツイン・エンジン ( 888cc の 水冷L型エンジン )
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実に美しい外見を持った水冷エンジンです。   うん?  水冷L型エンジン? 
元々DUCATILツイン・エンジン空冷の時代に前後のシリンダーをより効率良く冷やす事を目的
開発された物でした。

水冷になった時点でL型のレイアウトを取るメリットは無くなっていたはずです。

それが証拠にHONDAのVTR1000V型エンジンを水冷とし、かつ、スイング・アーム・ピポットを
エンジン後端
に設けてホイール・ベースを短いまま、スイングアーム長を伸ばす事に成功しています。
 
 HONDA VTR1000 ( 1997年式 )
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更にラジエターも車体両サイドに設置し、車体長を短くする努力を色々しています。

恐らく、DUCATIのスーパー・バイクの冷却方式が空冷から水冷に変わってもL字型のレイアウト
変えないのは長年培って来たLツインのエンジン・レイアウトに伴う他の技術使えなくなるからだと
思われます。

技術連綿として受け継がれて続いて行くからこそ、成果を出せるのです。

特にレースの世界では試作とその成果は直ぐに出せないと結果を残せません

空冷Lツインで培った車体の構成技術を大きく変える事なく、エンジンを水冷化してパワーを稼ごうとしたのです。

こうして水冷Lツイン・エンジンと言う有る意味、矛盾したエンジンが生まれ、
それが現実に活躍したのです。

しかし、その魔力も薄れ、狭角V4エンジンを装備したアプリリアに牙城を脅かされています。

DUCATIがどの様な新しい技術を生み出すか、興味深い事です。

                                                     ( この項続く )

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by SS992 | 2011-07-11 21:00 | メカ談義

683.ツイン・エンジンの可能性 (6) 2st勢の逆襲

 HONDAkawasakiが多気筒マシンによる北米市場の開拓を行っていた時、
YAMAHASUZUKIは一体何をしていたのでしょうか?

HONDAのCB450がボンネビルに苦戦していた1966年kawasaki は同じ4stのW1を持って
ボンネビルに対抗しようとしていましたが、やはり苦戦は免れませんでした。

 kawasaki W1 (1966年式 OHV バーチカル・ツイン 650cc )
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それはW1はボンネビルのコピーと言って良い英車ベッタリの設計思想で作られたバイクだったからです。
右チェンジ、左レーキの装備がそれを物語っています。)

これでは勝負に成りません。

そこでkawasakiZ1を計画、設計思想を一新し、成功を掴む事が出来たのです。

そしてその保険の様なもう一本の計画を持っていました。

それはHONDAを除く国内三社が得意な2stのバイクでkawasakiSUZUKIも勝負すると言うものでした。

結果、得意分野ですから有る程度の成功を収め、トライアンフに一矢、報いました

 kawasaki マッハⅢ H1 ( 1968年式 2st ピストン・バルブ 3気筒 498cc 車重174kg )
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60hp/7500rpm 5.85kgm/7000tpm この驚異的な性能から当時はじゃじゃ馬とよばれました。
同じくkawasaki マッハⅢ H2 ( 後期型は排気量が750ccにアップしました。 )

kawasaki マッハⅢ H2 ( 1968年式 2st ピストン・バルブ 3気筒 749cc  )
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( 最大出力 74hp/6500rpm 最大トルク7.9kmh6500rpm )


SUZUKIも米市場への殴りこみを同じ時期に2stT500で行いました。

 SUZUKI T500 ( 1968年式 ピストン・バルブ空冷2気筒 最高出力47hp )
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このバイクも好評を持って迎えられ、北米市場は2stのバイクで席巻されるのでは・・・と言う危惧を持つ
筋もありましたが、英国車の牙城は強固で簡単には崩れませんでした。

 SUZUKI GT750 ( 1971年式 水冷2stピストンバルブ並列3気筒 排気量738cc )
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( 動力性能 67ps/6500rpm 7.7kgm/5500rpm 車重214kg )
強力な動力性能重い車重水冷エンジンを搭載している事から水牛(ウォーター・バファローと仇名されました。

いままでの説明でお判り頂けた通り、2stでも多気筒化の時代の波が押し寄せ、ツインの時代は
終わったかの様でした


                                                     ( この項続く )

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by SS992 | 2011-06-24 21:00 | メカ談義

681.ツイン・エンジンの可能性 (4) 高出力化への道

 1960年ごろまでは北米のスポーツ・バイクの市場は殆ど英国車のものでした。

 BSA 650 RGS ( 1962年式 650cc 2気筒 )
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北米現地のメーカー、ハーレーやインディアンツアラーがメインだったので殆ど競合しなかったのです。


 インディアン チーフ ( 1948年式 排気量1200cc )
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BSAインディアンを比べると同じ二輪車なのに、全く別次元の乗り物だと言う事が判ります。

 しかし、1960年ごろ迄には、新興のメーカーであるHONDA北米市場に手を伸ばし始めました。

 HONDA CB72 TYPE2 ( 1961年式 4st 2バルブ 並列2気筒 )
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(この車両にはシートとしてY部品と呼ばれたレース用部品が付いています。)

 当時、英国車トライアンフに代表される大排気量車を輸出の中心にしていました。

 トライアンフ TR6 ( 1960年式 650cc 4st 2バルブ 並列2気筒 42ps/6500rpm )
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トライアンフは日本の少排気量車など眼中に無かった様ですが、技術の差を見せ付けようと
ボンネビル・ソルトフラッツで速度記録に挑戦しました。

 1956年 疾走するテキサス・シガー ( トライアンフ・エンジンを2基搭載 )
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345km/hの世界記録を樹立しました。( この記録は公認されませんでしたが、トライアンフに取って、
それはどうでも良い事でした。)

トライアンフはすぐさまこの好機を利用しました。

1966年OHV 8バルブの新型車ボンネビルの名を冠し、大々的に販売したのです。

 トライアンフ T120 ボンネビル ( 1966年式 OHV8バルブ 650cc 46ps/6500rpm )
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この記録の壁はHONDAを初めとする日本メーカーの技術陣にとって聳え立つ巨峰でした。

しかし、HONDAは一人、違うフィロソフィーを持っていました。

それは、技術で日本一になる事でした。

そして、本当の日本一は世界一になって初めて達成されると言うとてつもない考え方でした。

そしてその具体的挑戦策としてHONDAが提示したのは450ccの排気量で650ccの英国車を超える
出力
を誇るCB450でした。

 HONDA CB450 ( 1965年式 DOHC4バルブ450cc 43ps/10000rpm )
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( 上図のバイクはセパ・ハンを装備していますが、これはオリジナルではありません。 )
また、性能的にT120より僅かに劣っていますがCB450の目標はT120ではなく、TR6 だったためです。

このバイクの特徴はバルブ・スプリングトーション・バー・スプリングを使った事でした。

通常のコイル・スプリングでは必要とされる高回転、10,000rpmに追従出来なかったのです。

そう、このバイクはより小排気量(450cc)でより大排気量(650cc)のバイクに勝る出力を得るために
ボンネビルより高回転までエンジンを廻す様に設定されていたのです。(ボンネビルは6,500rpm

性能的には完全にボンネビルを打ち負かしたCB450ですが、商業的には失敗作でした。

 高性能車が好きなはずのアメリカ人はどうした訳か、CB450よりボンネビルを選んだのです。
 
 HONDA徹底的な市場調査と試作車による大陸横断実地試験を行いました。

その結果、判ったのはアクセルを開け続けて得られる高回転による高出力はアメリカ人の嗜好に合わないと言う事でした。

適度なアクセル開度必要な高出力を得るにはトルクを太らせなければなりません

馬力とはトルクとその時の回転数掛けたものです。

そして、トルクは排気量同じならほとんど、どのエンジンでも同じ値を示すのです。

回転数を上げずに馬力を増やすには・・・排気量の増大しかありませんでした。

その結果、生まれたのが伝説の名機 HONDA CB750K0 です。

 HONDA CB750 K0 ( 1969年式 OHC 8バルブ 4気筒 749cc )
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ほぼ時期を同じくしてkawasakiも ニューヨーク・ステーキの暗号名で呼ばれた Z1 を発表しました。

 kawasaki Z1 (1972年式 DOHC 16バルブ 4気筒 900cc )
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こうして2気筒の全盛時期は終了し、多気筒の時代に移って行きました。

                                                     ( この項続く )

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by SS992 | 2011-06-14 21:00 | メカ談義

680.ツイン・エンジンの可能性 (3) パラレル・ツイン・エンジンの登場

 パラレル・ツイン(平行2気筒)エンジンと言うといかにも旧式なエンジンと言う感じがします。

 kawasaki W800 ( 2011年式 800cc )
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( ベベル駆動のカムを持つ、バーチカル・ツイン・エンジンを装備したテイスティ・モデルです。 )


パラレル・ツイン歴史上から身れば、舞台に登場したのはVツインエンジンよりも後で、この後に続く、
多気筒エンジンの先駆けでした。

 トライアンフ サンダーバード6T ( 1950年式 OHV2バルブ 649cc )
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 ノートン 500 ドミネーター ( 500cc リアがプランジャー・サスなので1950年代前半と判断  )
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(エンジン・シリンダーが直立しているのでバーチカル・ツインとよばれました。)

 HONDA CS92 ( 125cc 1960年代 )
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( 本田宗一郎が考案した神社仏閣構造と呼ばれるユニークなフレームを持っていました。)
このバイクのエンジン・シリンダーは直立ではなく、前傾して詰まれていますが、これは少しでも
重心を下げようとする涙ぐましい努力の現われでした。

この後、各国のバイク・メーカーは競ってパラレル・ツインのバイクを製造しました。

現在、多気筒のバイクが高性能バイクの証であるのと同じ様に、2気筒である事が高性能バイクの
ステータス
だったのです。

 BSA A10 ロケット・ゴールドスター ( 1962年式 650cc )
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 YAMAHA YDS-1 ( 1960年式 2st 250cc 5速 20hp )
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 HONDA CB250 EXP ( 1960年代前半 250cc 4st 北米輸出モデル )
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(対抗する英国車を意識してか、バーチカル・ツイン気味のエンジンの積み方です。)

 MVアグスタ 250 ( 1950年代? 250cc )
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MVアグスタ初期には少排気量の廉価版モデルを販売していました。

 MVアグスタ 350 スポーツ ( 1975年式 350cc カウルはオプション設定でした。 )
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カウルで包まれた内のエンジンはジウジアーロ・デザインの 350cc 2気筒でした。
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フレームユニークなダイアモンド・タイプなのも特徴でした。

 この後、英国車日本車北米市場を巡って熾烈な戦いを演じました。

                                                     ( この項続く )

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by SS992 | 2011-06-10 21:00 | メカ談義

679.ツイン・エンジンの可能性 (2) Vツイン・エンジンの発達

 エンジンの歴史的に見ると単気筒エンジンの次に出現したのはVツイン・エンジンでした。

 ハーレー 9E 1000  ( 1913年式 吸気OHV 排気SV 45Vツイン 1000cc 8HP )
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 BSA Type7 ( 1927年式 770cc )
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 インディアン 101 ( 1928年式 750cc )
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これは単気筒エンジンのクランク・ピンにも一つのコンロッドを繋ぐ形になっており、初期には2つの
シリンダー角が90°以下の侠角であるのが当たり前でした。

つまり、初期のVツインは単なる出力発生源の増加を目的としており、トルクは厚くなったものの
高回転化は果たせず、出力の増大にはあまり貢献出来ません
でした。
 
 Vツイン・エンジンの模式図
b0076232_3223475.jpg

上図を見るとVツイン・エンジン単気筒エンジンの補強策として生まれたのが良く判ります。

 後年、この狭角Vツインはその鼓動感からテイスティな乗り味を求めるモデル(特にアメリカン)に
用いられました。

 YAMAHA XV400 ビラーゴ Ⅰ型 ( 1987年式 )
b0076232_5553345.jpg

小型ガソリン・タンク風のエア・フィルターエンジンを巨大に見せ、魅力的でした。)

そして、高性能バイクには90°Vツイン(Lツイン)が用いられる様になりました。

その理由は以前から記している一次振動を0に出来るので高回転まで廻せ、ひいては高出力を得る事が
出来たためです。

 HONDA VTZ250 ( 1984年式 250cc 水冷90°Vツイン )
b0076232_613559.jpg

(バイク名はコメントの指摘により修正しています。)

DUCATI 900SS  (1991年式 900cc 空油冷Lツイン)
b0076232_618544.jpg

(出尽くしたかに見えたトリコロール・カラーもこうした処理をすると秀逸です。)

 DUCATI 851  (1991年式 851cc 水冷Lツイン)
b0076232_6275483.jpg

(この塗装はカッコイイ! 古い851新しい1198Rより個性的魅力的に見えます。 
いつか別に特集します。)

 DUCATI 888用 水冷Lツインエンジン
b0076232_6293287.jpg


V(L)ツインは余分なバランサーを必要とせず、一次振動を消去出来る勝れた特性を持っています。

しかし、反面、エンジンの前後長が長くなり、ホイール・ベースを長く出来ないスポーツ・バイクにおいては
スイング・アーム長を長く設定出来なくなってしまってアンチ・スクワット性に悪影響を及ぼして
しまいます。

スポーツ・バイクにとって一番使い易いエンジンなのですが、この欠点は大きなマイナスです。

この辺りについては、後でもう一度触れますのでこれで一旦終わりとさせていただきます。

二気筒エンジンにはもう一つ、パラレル・ツインと呼ばれる形式があります。

次回はこのパラレル・ツインの可能性について考察してみたいと思います。

                                                     ( この項続く )

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by SS992 | 2011-06-06 21:00 | メカ談義