前回見てきたレーサーを手本にロッカー達は自分達のバイクを改造して行きました。
しかし、
カフェ・レーサーという言葉は単なる改造バイクに与えられる称号ではなく、
それなりに
走りを意識した物のみに与えられるものでした。
夜々、カフェに集まり、愛車の自慢話をするだけで、決して
勝負しようとしない連中の事も
カフェ・レーサーと呼ぶ事がある様ですが、この場合、
言葉の対象は人であり、
バイクではありません。
戦後の第1期黄金時代(1950~1960)に、一番人気のあった、
トライアンフ 650cc バーチカル・ツイン
(直立シリンダー、2気筒)をベースとしたカフェ・レーサーです。
日本国内のトライアンフの第一人者が
車検のついたフレームにガレージにあった無数の
トライアンフの
部品を組み付けて作った
真にドンピシャリ!のカフェ・レーサーなのです。
トライアンフ サンダーバード 110 650cc (1955)
トライアンフ サンダーバード 110 650cc 表
当時のトライアンフには
クリップ・オン・ハンドルの付いたバイクはありません。
トライアンフ サンダーバード 110 650cc 裏
クランク・ケースはミッション別体式を使っています。 フレームは
シングル・クレードルです。
英車は2気筒でも単気筒と同じ様に
表(タイミング・ケース側)、
裏(動力一次伝達系側)、と
いう言い方をします。
トライアンフ サンダーバード 650cc ? オリジナル? (1955)
多分、
細部の特徴から判断するとこれが
オリジナルだと思われますが、
データが無いので確実ではありません。
BSA DBD34 ゴールドスターに至っては
ストック状態で即、レースに出られる性能を誇っていました。
日本のレース黎明期、
浅間火山レースでの活躍は
高橋国光の名と共にもはや伝説となっています。
カウルこそ装備していませんが
レーサー・レプリカ、否、レーサーそのものでした。
BSA DBD34 ゴールドスター (1957)
BSA DBD34 ゴールドスター 表
BSA DBD34 ゴールドスター 裏
BSA DBD34 ゴールドスターもやはり、裏と表を 持つバイクでした。
ノートン 850 カフェ・レーサー (1989)
ノートン・コマンド 850 ロードスター (1973)
これは
ノートン・マンクスのフェザーベット・フレームにノートン・コマンド850のエンジンを積んだものです。
ノートンの純正製品にはこの組み合わせは無く、真にカフェ・レーサーと言えるでしょう。
製作はダイナ・ベクター英国の旧車専門店、旧車用のアフター・パーツを扱う会社です。
その扱うパーツは多岐に渡り、新車1台が組める程なのです。
その
証拠がこれ!
エンジン、ギアボックス等、ケース類は中古ですが、その他は
全て新品なのです。
このため、
製作年度が1989年と比較的新しいのです。
一番、
カフェ・レーサーらしい成り立ちを持つのは
トライトンでしょう。
トライトン 650 カフェ・レーサー (1) 1970年代?
トライトン 650 カフェ・レーサー (2) 1970年代?
トライトン 650 カフェ・レーサー (3) 1970年代?
英国に
トライトンというメーカーはありません。他のどの国にもないのです。
実はこの
トライトンと言うバイク、
トライアンフからエンジンを、
ノートンからフレームを取った、
一種のキメラ(合成獣)なのです。
今は
4輪車はそのほとんどが
液冷ですが、昔は
空冷エンジンも存在し、レーサーにも
軽量な空冷エンジンが
使われていました。 特にノートンのエンジンは性能と信頼性が高く、この用途に良く使われていました。
ある時、空冷エンジンの大量注文があり、エンジン在庫だけでは対処し切れなくなったメーカーは
すでにバイクに積んであったエンジンを降ろして注文に間に合わせました。
しかし、工場には心臓を抜き取られた哀れなバイクが多数残されました。
しかも、そのフレームは当時最高の性能を持つ、フェザー・ベットです。 もったいない!
誰かがそうつぶやくともう、一人がトライアンフのエンジンを積もうと言い出しました。
そして
出来上がったバイクは非常に高性能を出し、
トライアンフ+ノートンでトライトンと呼ばれる様になりました。
これ以来、エンジンとフレームのメーカーが違う時、両方の名前を合成して新しい呼び名を付ける様になりました。
例えば
ノーヴィン 500 (エンジン>ヴィンセント、フレーム>ノートン)
メグトン (エンジン>メグロ、フレーム>ノートン) 等。