エンジンを構成する部品の内、
ピストンやシリンダー、コンロッド、給排気バルブ周りは回転運動を
しないで往復運動をしますが、この時発生する慣性力はとても大きな物です。
(200ccの単気筒エンジンのピストンで回転数、10,000rpmの時、慣性力は 約1t にも成ります。)
これら、
往復運動をする部品の慣性力がエンジンの
振動となって現れます。
529.で、エンジンの排気量を上げて、なおかつ、回転も上げられる方法として
もともとの単気筒エンジンを二つ並べる方法を示しました。 これが2気筒エンジンです。
この場合、排気量も2倍となる設定で話を進めましたが、元々の単気筒の場合の排気量を変えず、
2気筒にするとどうなるでしょうか?
1気筒当たりの排気量は 1/2 に なります。
当然、
ピストンやシリンダー、コンロッド、給排気バルブ周りも小さくて良くなります。
当然、そこに働く慣性力も小さくなり、振動も低く抑えられるばかりではなく、互いの気筒で発生する振動を
相殺させて消す事も出来るのです。
こうした考えのもと、1960年代、
ジレラやMVアグスタは4気筒のマシンで世界GPを戦っていました。
ジレラ 500cc 4気筒 レーサー
MVアグスタ 500cc 4気筒 レーサー
後発の
HONDAは4気筒のマシンはおろか、
250cc 6気筒のマシン、 50cc 2 気筒のマシンを投入しました。
RC161 250cc 4気筒
RC166 250cc 6気筒
50cc 2気筒 レーサー
鉛筆の様なピストン、マッチ棒のような点火プラグを装備した
HONDAのレース用エンジンは
時計の様に精密だと欧米人を驚かせました。
そして、1969年初の直列4気筒マシン
ホンダドリーム CB750 K0 が発売され、
国内外のユーザーに熱狂的に向かい入れられました。
当時、欧米の各メーカーは750cc以上のバイクを出していたのにも関らず、です。
ノートン・コマンドー 850
ラベルダ 750FC
ビンセント・ブラックシャドウ 1000cc
DUCATI 750GT
しかし、どのメーカーのバイクも
GPレース直系を匂わせるエンジンではありませんでした。
MVアグスタ750s アメリカ
唯一、MVアグスタだけが並列4気筒を積み、GP直系をアピールしましたが、価格的に高価で若者に
手の届くものではありませんでした。
HONDAを含め、日本車は
レーサーに引けを取らない
外観と性能、そして信頼性を兼ね備えていました。
しかも、
価格的に他社に比べて安価だったと考えられます。
これでは、勝負になりません。 欧米のメーカーは次々と姿を消して行きました。
つまり、エンジンの多気筒化は何よりも
そのバイクの高性能の証として必要なものだったのです。
そして、
高性能であるにも関らず、信頼性も高く、値段も安い、コストパフォーマンスの高さが
ホンダ・ドリーム CB750 Four の人気の秘密だったのです。