フェニキア人は
互いに剣を交える様な戦闘を好んでいなかった事は既に(569.)で述べました。
しかし、どうしても戦わなければならない時には自らの
勝れた操船技術を生かして一気にケリをつける為、
戦闘専用艦を作ったのです。
彼等は本当に自らの艦を
手足の様に操る事が出来ました。
衝角戦だけでなく、敵艦の横に並ぶと、わざと重心をずらして艦を傾け、
敵船側の船腹を突き出しながら
接近し、相手のオールを全て
一瞬で折ってしまうと言う
高等技術も持っていました。
勿論、商船はこんな武装はしていません。 ごく
普通の1枚帆の帆船でした。
彼等は元々、砂漠の民だった様です。 砂漠を旅する内に何も目標物の無い砂漠で星や太陽を頼りに位置や、
方位を割り出す方法に長けて行った様です。
この技術は
地中海の他の海の民は持っておらず、
地中海の貿易権は
フェニキア人が一手に握って
いました。
他の海の民は
沿岸航海しか出来ませんでしたが、
勇猛で度々、フェニキア人の
商船を襲いました。
フェニキアの戦艦はこうした
海賊(?)から自国の商船を護る為に生まれました。
つまり、派手々しい
武装だけを見て相手が
好戦的と判断するのは
早計だと言うことです。
しかし、
防衛用とはいえ、
武装は武装です。 しかも、彼等はこの防衛力すら販売した様です。
(ペルシャがギリシャを攻めた戦いで行われた
サラミスの海戦には多数のフェニキア戦艦が
ペルシャ側の戦力として参加していました。)
そして、地中海の沿岸殆どを支配下に置く、
軍事大国カルタゴを生みましたが、同じく
地中海の覇権を狙う、
ローマと対立、第1、2 ポエニ戦役で
ローマに滅ぼされました。
今の感覚では武器を持った方が好戦的と考えがちですが、一概にそうだとは言えない事が解ります。
しかし、自分達の
武装の意味を忘れると結局、
軍事大国化して
滅びる運命になるのです。