カワサキが開発したレーサー、
X-09はカウルを纏った状態では
平凡なマシンに見えます。
kawasaki X-09 (1993年式 250cc 2st V型 2気筒)
しかし、カウルを剥ぎ取ってみるとその
特異な正体が現れます。
特徴的なのは
排気管の取り回しで特に
左側面の排気管は大きくうねっています。
これは
X-09が
V型2気筒のエンジン・レイアウトを持ちながら、
通常のV型2気筒ではなく、
Vバンクが下に向かって開いていると言う前代見聞の構造を持っている為です。
そして
ツイン・スパー・フレームの内側にはほとんど何も無い
エア・ボックスになっています。
何故、この様な特異な構造を持っているのでしょうか?
これは
エア・ファンネル →
キャブレター →
リード・バルブ →
クランク・ケースと言う
吸気経路を
極力、
直線的に配置するのが目的でした。
更に
エア・ファンネルの吸気口の周りの
空気を減速し、
安定して供給する
大容量のエア・ボックスを
設置する事が出来ました。
ツイン・スパー・フレームはかなり
高剛性な物が使われていた様です。
水冷エンジン用ラジエターは
V字型に窪んでいます。
ラジエターを極力、
前方に配置した場合、
タイヤと干渉する寸前までしか前に配置出来ないのですが、
V字型にする事で
タイヤとの干渉を避けてより前方に配置する事が出来ました。
これも
ツイン・スパー・フレーム内が空だから出来た事です。
この
エア・ボックスには
フレームを通して
新気が導入されます。
そして、
カウルにも
新気導入用エア・ダクトが口を開けています。
カウル下方には
乾式クラッチ冷却用空気導入ダクトがあります。
これはレーサーでもあまり聞いた事の無い装備ですが、
スタート時に
長い半クラッチを
使い続けなければならない
レーサーには
有効な装備と言えるでしょう。
これだけ新装備や新機構を盛り込んだ
X-09ですが、残念ながらレーサー・レプリカの
発売はおろか、
レーサーとしても
1993年を最後に
開発は打ち切られました。
時はすでに
レーサー・レプリカの時代を過ぎ、
ネイキッド・モデルの時代に移って行ったのです。
そして、皮肉にも
ネイキッド・モデルの先鞭を付けたのは
カワサキでした。
ゼファー 400 (1989年式)
親会社の川崎重工内部では業績不振の二輪部門からの撤退も囁かれていましたが、
ゼファーのヒットは
それを打ち破る程のものでした。
その後、カワサキは
4stのメーカーとして躍進していったのです。
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