前回までに
鈴鹿八耐に優勝したレーサーを分析して
スポーツ・バイクに求められた特性を
検証して来ましたが、その中で
アンチ・スクワット特性と言う聞きなれない言葉が出てきました。
スクワットは
ヒンズー・スクワットのスクワットと同じで
しゃがみ込むと言う意味です。
すなわち、
アンチ・スクワット特性とは
しゃがみ込まない特性と言う事です。
バイクが
しゃがみ込まない特性とは
スイング・アームがリフトする事を意味します。
Fig 1
何故、
スクワットすると
バイクにとって都合が悪いのでしょうか?
それは
コーナリング時に
タイヤが路面をグリップしなくなってしまうからです。
YZFーR1 (2008年)
DUCATI 1198 (2009年) 鈴鹿八耐
これだけ
バンクしている状態で
リア・タイヤのグリップが失われたら・・・。
たちまち
後輪からスリップして転倒してしまいます。
では
バイクがどう言う
状態の時
スイング・アームはスクワットしたり、リフトしたりするのでしょうか。
一般的に
スイング・アーム・ピボットと
ドライブ・ギアが
同一直線上にあった場合、
アクセルを開けるとスイング・アームはスクワットし、リア・タイヤは車体側に引き込まれます。
ビモータ SB2 (1977年式)
(このバイクは
コアキシャル・スイングアームと言って
スイング・アーム・ピボットとドライブ・ギアの軸が同軸でした。
この方式は単にドライブ・ギアを交換するだけでもスイング・アームを外さなければならず失敗でしたが、
アンチ・スクワット特性の発揮と言う面から見ても失敗でした。)
再度
Fig1を見て頂きたいのですが、この図だと
ドライブ・ギアよりスイング・アーム・ピボットがかなり上にあります。
この状態で
アクセルを開けるとチェーンが引っ張られ、スイング・アームは下に下がり、
タイヤは
路面に
押し付けられます。
昔の
GPレーサーはコーナーに
スロットル全閉で進入し、
タイヤが
グリップを失わない様に徐々にアクセルを開けて行き、出口近くでようやく全開と言う状態でした。
また車体の
重量配分も
後輪重視で
後輪のグリップが抜けにくい設定だったのです。
HONDA RC166 (1966年式)
しかし、
当時の日本製GPレーサーは
直線での速度を求め、
コーナーはやり過ごす設定でした。
馬力を求める事が
至上の命題でコーナリング時の
ハンドリングは2の次だったのです。
(
この項続く )
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