日本国内四大メーカーが生き残りを賭けて
北米市場に進出して行った時、
YAMAHAは何をしていたの
でしょうか?
YAMAHAは創業時からの
2stエンジンの老舗でしたから、
世間は当然、新型2stモデルを
北米市場に
投入するものと思い込んでいました。
しかし、1970年、満を時して
YAMAHAが発表したのは
トライアンフのデッド・コピーかと思える様な、
650ccバーチカル・ツインの、
何の変哲もないつまらないバイクに見えました。
YAMAHA XS1・650 (1970年式 OHC 2気筒 653.5cc )
(
デザインは
凡庸ですが、そこから立ち上ってくる
走りの雰囲気は唯ならねものがありました。)
しかも
2stのYAMAHAが
本格的に送り出す初めての4st大排気量車でした。
当然、
安全策を取ったと言う
見方も出来ます。
しかし、
技術の世界は物事が一足飛びに発展する事は有り得ません。
地道な努力を積み重ねて
新しい物を生み出すのです。
近年の
ベンチャー企業の中には一朝一夕に育った会社がありますが、
それとて
母体となった会社なり、
個人の長年の研究が必ずあります。
だから
大排気量4st車を開発するにあたって
YAMAHAがトライアンフを模したかの様なバイクを
作った事を
賞賛しこそすれ、非難する気にはなれません。
つまり、
YAMAHAは原点に立ち返って自分達の立ち位置を見定めな直したのです。
YAMAHA XS-1・650 と
トライアンフ T120 ボンネビルを
比較してみると
面白い事が判ります。
性能比較表
エンジンの形式は古い
T120はOHV、新しい
XS1はOHCである以外、同じです。
排気量、圧縮比もほぼ同等、しかし、
出力は
XS1の方が7ps上回っています。
これはNo。683のHONDA CB450の時に述べた様に
XS1の方がショート・ストロークであるため、
エンジンを
高回転まで廻せるので
出力が上回ったのです。
また、これは次に評価する使用感に関係する事なのですが、車体重量/エンジン出力の比を見てみます。
T120は
車重164kgで最高出力は46ph、重量・出力比は3,57でした。 対する
XS-1は
車重185kgで最高出力は53hp、重量・出力比は3.49でした。
僅かですがT120の方が上回っています。
これが
T120の弾けるようなパンチ力の元となっていました。
反対により少ない
重量・出力比、3.49を持つ
XS1はスムーズな運転を可能としました。
あと、
使用感、と言うか、
数字に出ない部分でも両者には
大きな違いが有りました。
より新しいバイクである
XS1は
エンジンのピック・アップが良く、
スムーズで心地よかったそうです。
対する
T120は
トルクのリズム感が勝れ、
弾ける様なパンチ力を体感出来ました。
しかし、
T120の基本設計は1940年代、
ストロークの長いギア・シフトは間を置いたギア・チェンジが必要で
慣れないと使いこなすのが難しかった様です。
また、
クラッチの切れも悪く、ブレーキもプアでした。
この点新しい
XS1は
5速の減速機を装備し、
小気味良いシフトが可能でしたし、
クラッチも良く作動しました。
ブレーキの能力も充分でしたが、
XS1-E(1971年式)では
前輪にディスク・ブレーキを装備して安全性を
高めました。
(このXS1-Eには
セル・モーターも付き、ユーザーに喜ばれました。)
YAMAHA XS1-E (1968年式)
(この車両はあちこちにオーナーの手が入っており、原型から少し離れた存在になっています。)
しかし、
HONDAが
750ccのCB750K0を発表していたので排気量の少ない
XS1は
あまり
売れませんでした。
1972年、YAMAHAはXS1を750ccにボア・アップした
TX750(OHC 並列2気筒)を出しましたが、
今度は
kawasakiのZ1の陰に隠れてしまい、とうとう
大排気量の並列2気筒の開発を中断して
しまいました。
YAMAHA TX750 (1972年式 空冷 4St 2バルフ ゙並列2気筒 743cc 63hp/6500rpm 5速 210kg)
この後、YAMAHAは
GX750(1976年式 DOHC 並列3気筒 シャフト・ドライブ)を開発し、やはり、
多気筒化の道を歩むのでした。
YAMAHA XSー750 (1976年式 DOHC 並列3気筒 3-2・マフラー シャフト・ドライブ)
(
XS-750は
GS750の輸出仕様。)
(
この項続く )
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