FWSはHONDA社内の
開発コードです。
本来の名前は
RS1000RW、前回チョットだけ触れた
営業部隊から要請のあった
VFシリーズ拡販用の
レーサーです。
しかし、当時の
関係者は(ライダーを含め)このレーサーを
FWSと呼んでいました。
HONDA RS1000RW (1982年式 水冷DOHCV4 1024.48cc)
この
レーサーは通常のレーサーと
大きく異なる事がありました。
それは
設計要求がほとんど
白紙委任状だった事です。
HONDAの
会社側から出された
要求は2つだけ、
90°V4エンジンを積む事、そして絶対勝利する事、
それも
圧倒的な勝利を獲得する事でした。
開発期間は
1年もなく、このため、エンジン以外は比較的
オーソドックスに纏められました。
一番苦労したのは
排気管の取り回しで、後バンクの2気筒を集合させた排気管は
管長を稼ぐために
リア・カウルの中でトグロを巻いていました。
そのため
リア・カウルには
熱がこもり、
カウルが燃えたりしました。
対策として
リア・カウルにメッシュ部分が設けられましたが、どれほど
効果があったか、
疑問です。
しかしそんな事は
FWSにとって
大きな問題ではありませんでした。
それは下の写真を見れば判ります。
ガソリン・タンクの
側面を見て下さい。
HONDAのウイング・マークの後にあるのは
ガソリンの給油口です。
普通のレーサーは
ガソリン・タンクの上に給油口があります。
つまり
FWSは
左側からしか給油しない設定なのです。
これは
FWSが
1982年のデイトナ200マイルレースただ一回のために作られたものだったからです。
デイトナのコースは
左回りで
ピットも左側だったのです。
実際にレースが始まると
2st500ccGPレーサーも
2st750ccレーサーもあまりの
性能差に驚きました。
そう、あの
ケニー・ロバーツさえも顔色なからしめたのです。
ただ、その
強烈な性能に当時の
タイヤがついてゆけず、トレッドが剥がれる
チャンキングと言う現象に見舞われ
ピットインの回数が増えて結局、
順位は2位でした。
しかし、その
重々しい排気音とは裏腹な
圧倒的な速さに観衆は
V4エンジンに
強い印象を抱きました。
FWSは
VFシリーズ拡販用の宣伝ツールとしての役割をじゅうにぶんに果たしたのです。
この後、
V4レーサーは
RVFとして最強の名を欲しいままにしますが、それはまた別の機会に・・・。
(
この項了)
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