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「峰風」とともに

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741.オーヴァー・レーシングの挑戦 (1) (直4編)

 2月初めから不調になり、やっと少し回復して来たので更新します。

例年、春は不調になるのですが今年は特に長いです。(もう梅雨ですよ。梅雨

 まだあまり回復していないのですが、FWSの開発に携わった方からコメントを頂き、少し力が出ました


 そこで私の大好きな単気筒車を中心にレーサーを開発しているオーヴァー・レーシングの活動
振り返ってみたいと思います。

 現オーヴァーフォールディングス代表佐藤健正氏1972年本田技研鈴鹿製作所に入社、

その後、モリワキ・エンジニアリングに引き抜かれ、更に1982年には独立してレーシングガレージ設立
技術畑を一直線に走ってきました

そんな彼がやりたかったのはやはりレース

独立して3年後1985年には初めてのオリジナル・フレーム車鈴鹿8耐に参戦しました。

   「OV-01」 (1985年)
741.オーヴァー・レーシングの挑戦 (1) (直4編)_b0076232_18521564.jpg

当時のTT-F1仕様 アルミ角フレームCBX750のエンジンを搭載。

(後述の「OV-05」の製作年度が1984年なので製作そのものは1984年以前と思われます。)

「OV-02」~「OV-04」データが見つからないのでどんなバイクだったのか、判りません
(存在しなかった可能性大です。)

 「OV-06」~「OV-09」までの車両はデータが少ないのですが、FZ750ベース
全日本選手権出場を目的とした車両でした。
 「OV-06」 (1986年)
741.オーヴァー・レーシングの挑戦 (1) (直4編)_b0076232_447218.jpg

 「OV-07」 (1987年)
741.オーヴァー・レーシングの挑戦 (1) (直4編)_b0076232_450131.jpg

FZ750は鉄フレームですが、「OV-07]アルミ・ツインスパーフレームに変わっています。
また、ガソリンタンクの形状が特異です。(燃料容量の確保が目的?)
シート・レールの形状も現在のレーサーと同じく最小限度の物になっています。
「OV-08」~「OV-09」は同じくFZ750ベースのレーサー全日本選手権出場車両ですが、画像が
ありません


この後、オーヴァー・レーシング新しい可能性を求めて直4以外のエンジン形式を追求し始めます。

                                               『(2)「単気筒 編」へつづく』

(クラシック・バイク・ブログ 「クラシックで行こう!」 はこちらから )







 
# by SS992 | 2012-06-13 21:00 | レース

740.竜の卵(4) ノートン・クラシック

 一番最後にREバイクを扱ったのは皮肉にも英国の老舗、ノートンでした。

 ノートン・クラシック (1988年式)
740.竜の卵(4) ノートン・クラシック_b0076232_7115740.jpg

仕様: 空冷2ローター 588cc

最高出力:  80ps/9000rpm

最大トルク: 6.98kgf/7000rpm

最高速度: 200km/h

車両重量: 229kg

バン・ビーンから更に10年の歳月が流れているのでエンジン周りはより洗練されている様にみえます。
740.竜の卵(4) ノートン・クラシック_b0076232_7543465.jpg

740.竜の卵(4) ノートン・クラシック_b0076232_7544790.jpg

740.竜の卵(4) ノートン・クラシック_b0076232_755246.jpg


特徴的なボックス状フレーム
740.竜の卵(4) ノートン・クラシック_b0076232_759214.jpg

ノートンのフレームと言ったらフェザー・ベッドと呼ばれたダブル・クレードルの物が有名ですが
RE車ではその伝統を捨てていました

RE車を扱っていた時代のノートンは通常のレシプロ・エンジンのバイクをほとんど作っていません。

これは1960年代のノートンが持っていた重大な問題と関係がありました。

それは大排気量パラレル・ツイン(360°クランク)・エンジンを積んでいた事に起因する振動問題でした。

この問題を解決する為に今のスクーターのエンジン搭載方式の様なアイソラスティック機構と言う方式まで
採用していました。 (接合部はラバー・マウント)
740.竜の卵(4) ノートン・クラシック_b0076232_8145764.jpg


基本的に振動問題の少ないREノートンにとって他社よりもより魅力的に感じられたのではないでしょうか?

しかし、他社も悩まされた冷却問題や重量問題、ひいては高価格といった問題はノートンと言えども
無視出来ず、また、この当時販路の無い事も大きなマイナス要素となってノートンのREは消滅しました。

 ノートン F1 (1991年式)
740.竜の卵(4) ノートン・クラシック_b0076232_1863538.jpg

仕様: 水冷2ローター 

排気量: 588cc

最大出力: 95ps

車重: 192kg

価格: 450万円

当時としてはかなりの高性能でしたが価格がこれほど高額では売れるはずもありませんでした。

こうしてRE車はメーカーとユーザーそれぞれに夢と挫折を残して消え去りました。

しかしレシプロ・エンジンの技術の熟成に多大な貢献をしたと思われます。

REの技術は決して無駄には成らなかったのです。
                                                      (この項了

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# by SS992 | 2012-02-12 21:00 | 憧れだった美女達

739.竜の卵(5) バンビーンOCR1000

 バンビーンは我が国ではさほど有名ではないバイクメーカーですが、欧州では知らぬ者はいない
有名なオランダの会社
でした。

1973年、時代の流れに乗る様にバンビーンREバイクを企画しました。

彼等が選んだエンジンはシトロエンGS 2ローター 996cc エンジン(107hp)でした。

試作車はエンジンが四輪用である事も手伝ってかなり大柄になりましたが、これがかえって好評を得、
バンビーンは製品化を決意しました。

 バンビーン OCR1000 (1977年式)
739.竜の卵(5) バンビーンOCR1000_b0076232_17543161.jpg

仕様: 排気量 996cc (2ローター式)

     最高出力 100ps/6500rpm

     最大トルク 13.8kgm/3500~5000rpm

     最高速度 200km・h以上

     車両重量 345kg

エンジンは元々四輪車用だったので構造などに無理は感じられません。
739.竜の卵(5) バンビーンOCR1000_b0076232_1851447.jpg

739.竜の卵(5) バンビーンOCR1000_b0076232_1852738.jpg

排気管の冷却方式はスズキRE5と同じ形式を取っていました。
739.竜の卵(5) バンビーンOCR1000_b0076232_187471.jpg


大柄な車体を売り物にしていたバンビーンOCR1000ですが大きな問題を一つ抱えていました。

ナンバー取得オランダでは出来なかったのです。

結局、西独(もはや死語)ドュデルスタット新工場を構えました。
739.竜の卵(5) バンビーンOCR1000_b0076232_18164065.jpg

最高出力こそBMW K100と同じ100hpでしたが最大トルクは倍以上あり、
その先行きは開けたかに見えましたが、スズキRE5も悩まされた量産化に向けての改良で重量が増えると
いう問題が行く手を阻みました。

試作段階での車重は270kgでしたが生産仕様の装備重量では330kgにもなってしまいました。

OCR1000のためだけに新工場を用意しなければならなかった事は当然、生産コストに跳ね返り、
バンビーンOCR1000は非常に高価なバイクとなってしまいました。

高価で重量過大なバイクは流石にアメリカでも売れず、その生産台数は僅か37~48台と言われています。

テスターに異次元の乗り味とまで言わせしめた異端の竜はここにその生涯を閉じたのです。
                                                     (この項続く

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# by SS992 | 2012-02-06 21:00 | 憧れだった美女達

738.竜の卵(4) スズキ RE5

 前回予告したスズキRE51974年に上市されました。

 スズキ RE5 (1974年式)
738.竜の卵(4) スズキ RE5_b0076232_9445970.jpg

【仕様】 水油冷シングルローターRE 497cc

      最高出力 62ps/6500rpm  最大トルク 7.6kgm/3500rpm

      乾燥重量 230kg

      デザイン ジウジアーロ

ジウジアーロのこのバイクに対するコンセプト筒型でした。
738.竜の卵(4) スズキ RE5_b0076232_119588.jpg

それが一番良く表れていたのが茶筒と呼ばれたメーター・ボックスでした。

このバイクが国産で唯一量産されたRE搭載市販バイクでした。

前回取り上げたYAMAHA RZ201 や KAWASAKI X99 に比べると
エンジン部分がずっと複雑です。
738.竜の卵(4) スズキ RE5_b0076232_10103086.jpg

 RE5 エンジン左
738.竜の卵(4) スズキ RE5_b0076232_10122691.jpg

 RE5 エンジン右
738.竜の卵(4) スズキ RE5_b0076232_10134634.jpg

ヤマハカワサキ車のエンジンが普通のバイクと遜色のないコンパクトさに纏まっているのに比べ、
スズキ RE5のエンジンはまるで動物の贓物を思わせる複雑な姿をしています。

これは単に見た目だけのものではなく、REの欠点を補っていった結果、補機類の塊になってしまった結果です。

冷却系も高い発熱量に対応して水冷を採用していますが、そのラジエター容量
通常のバイクより大きな物が必要でした。

比較的コンパクトな車体に対し不釣合いな位、大きなラジエターを装備しています。
738.竜の卵(4) スズキ RE5_b0076232_10253576.jpg

ローターやエキセントリック・シャフトは油冷を採用したため複雑なオイル循環経路を持ちます。
(純粋な潤滑目的のオイル潤滑方式はウエット・サンプでした。)

RE5市販車とするために行った工夫排気系にも見られました。
738.竜の卵(4) スズキ RE5_b0076232_10363080.jpg

エキゾースト・パイプの前端にメッシュがかけられた開口部があります。

これは内臓された本当のエキゾースト・パイプを走行中、ラムエア・システム強制冷却するための
ものなのです。

今まで見てきた様に、REをバイクに装備するのは比較的簡単に出来ても、それを市販車として熟成させてゆくと信頼性の向上のためメカニズムがどんどん複雑になり、RE本来のシンプルさや軽量さが失われてゆく結果と
なりました。

 RE5500ccクラスでしたがREをレシプロエンジンに換算した時の排気量は750cc相当となり、
当然、その性能750ccクラスを狙っていました。

しかし、実現出来た最高出力は62ps/6500rpm装備重量は250kgを超えてしまって最高速度
190km/hがやっとという状態では人気が出るはずも無く生産は終了しました。

それでも内外合わせて6000台売ったというのは良く健闘したと私は思います。

スズキ RE5が不調に終わったのは国内自主規制排気量の750ccに拘ったからではないでしょうか。
738.竜の卵(4) スズキ RE5_b0076232_11115134.jpg

 次は750ccの排気量に拘らなかったバン・ビーンノートンについて取り上げてみます。
                                                     (この項続く

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# by SS992 | 2012-01-18 21:00 | 憧れだった美女達

737.竜の卵(3) 孵れなかった竜達

 国産4大メーカーはもちろんREの開発を行いましたが、HONDAは研究程度
YAMAHAとKAWASAKI試作車どまり、唯一、スズキのみが量産車の販売に漕ぎ付けました。

スズキについては次回に譲り、今回はYAMAHAとKAWASAKIの試作車について語りたいと
思います。

 YAMAHA RZ201 (1972年東京モーターショー)
737.竜の卵(3) 孵れなかった竜達_b0076232_11391871.jpg

【仕様】 水冷2ローター660cc 
     最高出力68hp/6500rpm 最大速力190km/h

YAMAHAヤンマーディーゼルと提携してエンジン開発を依頼しました。

その結果、もともとのヴァンケル・ロータリーとは一味違う物になりました。

上画像のシート上、壁面にREの構造概念図(?)が見えます。
737.竜の卵(3) 孵れなかった竜達_b0076232_1212592.jpg

市販を視野に入れた東京モーターショーでの発表でしたが提携したヤンマーでエンジンの信頼性の
確保がなかなか出来ず、おり悪くオイル・ショック
が重なってお蔵入りになってしまいました。

 KAWASAKI X99 (1974年 実走テスト車)
737.竜の卵(3) 孵れなかった竜達_b0076232_12323727.jpg

KAWASAKI1972年NSUとライセンス契約を結び、開発資料を入手しています。

1974年には2ローター896ccのREを試作、ベンチテストで70ps/6500rpmを出しました。

その後の改良で目標値の85ps/6500rpmを達成しました。

直後に実車に搭載して日本自動車研究所高速周回路(谷田部コース)で実走テスト
しています。

しかし、1975年、ここまで順調に来た開発は理由は解かりませんが一時保留となり中止されました。

私が見るとYAMAHA RZ201KAWASAKI X99は後述するスズキRE5に比べて完成度が高い様に
見えます。

しかし当時のスズキの技術がヤマハやカワサキに比べて劣っていたとは考えられません。

ここまで形にした後、実際に市販車にまで仕上げるのが非常に大変だったと考えるのが順当でしょう。

次回は唯一のRE市販国産車スズキRE5でその辺りを見てみたいと思います。
                                                          (この項続く

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# by SS992 | 2012-01-14 21:00 | 憧れだった美女達